○上越地域消防事務組合ガス漏洩事故に対する消防活動基準

昭和57年4月1日

本部訓令第2号

(趣旨)

第1条 この基準は、ガスの漏洩事故が発生した場合、ガス爆発等の事故を未然に防止し、被害を最小限度に止めるための消防活動について必要な事項を定めるものとする。

(覚知時の措置)

第2条 ガス漏れ事故を覚知したときは、できる限り事故の状況を把握し、直ちに次の行動をとるものとする。

(1) 火災時の第1出動を原則とし、警戒出動をする。ただし、事故が小規模の場合は、特命出動とする。

(2) 通信担当者は、機を失することなく、関係機関に通報し、緊急出動を要請する。

(出動時の措置)

第3条 出動隊は、出動に際し、ガス検知器等の測定器具、拡声器材その他必要と認められる資機材を積載し、出動するものとする。

(現場到着時の措置)

第4条 出動隊は、事故現場周辺に到着したときは、風向、風速、地形の状況等を確認し、直ちに次の行動をとるものとする。

(1) 出動車両は、原則として現場の風上又は風横の安全な位置に停車すること。

(2) 出動隊の上席指揮者は、現場の風上又は風横の安全でかつ現場指揮に適した場所に現場本部を設置すること。

(各機関との協議)

第5条 現場指揮者(以下「指揮者」という。)は、直ちに出動した各関係機関の現場責任者を現場本部に召集し、ガス爆発防止対策に必要な措置を次により協議し、当該ガス漏洩事故現場における総括指揮を行うものとする。

(1) 情報収集に関すること。

(2) 警戒区域の設定及び付近の交通規制に関すること。

(3) 現場広報及び火気使用の禁止に関すること。

(4) 避難の指示及び誘導に関すること。

(5) ガスの供給停止及び電路の遮断に関すること。

(6) 屋内の場合は、換気及び進入の方法に関すること。

(7) 事後の処理その他必要な事項

2 指揮者は、活動中であっても事態の変化等必要に応じ関係機関と協議を行うものとする。

(情報の収集)

第6条 指揮者は、次により情報の収集を行い、滞留ガスの濃度及び漏洩範囲の早期確認に努めるものとする。

(1) 漏洩建物及び付近の住民、工事関係者その他関係ある者から事情聴取をする。

(2) ガス検知器等により努めて多くの場所で測定を行うものとする。

(火花を発する機器の使用禁止)

第7条 指揮者は、ガス滞留地域においては、次のような火花を発生するおそれのある機器の操作を厳禁とする。ただし、引火防止の措置を講ずるときは、この限りでない。

(1) 携帯無線機の発信

(2) 懐中電灯及び携帯拡声器等のスイッチ操作

(3) インターホーン及び電話

(4) 底に鋲のある履物等

(災害警戒区域の設定)

第8条 指揮者は、ガス滞留地域及びその周辺について、次により火災警戒区域を速やかに設定するものとする。

(1) 可燃性ガス検知器によるガス確認は、滞留危険を考慮し、爆発下限値の3分の1の濃度に達した位置を警戒区域とする。

(2) 風向、風速、地形及び建物状況等を考慮して範囲を設定する。

(3) 風下地域の設定については、ガス流動が遠方にまで及ぶので変動に即応できるようにする。

(4) 風上又は風横の安全な場所であっても常に風向の変化に留意し、即応できるようにする。

(5) 設定した区域の適宜な位置に消防隊員、警察官その他関係機関の職員を配置するとともに、「立入禁止」標旗付ロープ等により区域を明示する。

(警察官に対する協力要請)

第9条 指揮者は、現場の警察官及び関係機関の職員に対し、警戒区域の設定範囲を説明し、作業関係者以外の者の立入禁止及び制限、交通規制等について協力を要請する。

(現場広報)

第10条 現場の広報については、主としてメガホン又は戸別訪問により次の内容で実施するものとする。

(1) 警戒区域を設定した旨及び設定範囲

(2) 車両の使用の禁止

(3) 火気使用の禁止及び電気器具のスイッチ操作の禁止

(4) 電気又はガス供給停止措置の時間及び範囲

(避難の指示及び誘導)

第11条 指揮者は、警察及びガス事業現場責任者と次の各号により協議し、避難が必要と認められる範囲にある者に対し、別表のとおり避難誘導を行うものとする。

(1) 大容積の空洞部分にガス漏洩があると予想されるとき。

(2) 地中導管からの漏洩で視認(通常は霧状にみえる。)又は噴出等で確認できるとき。

(3) 土中のガスが各家庭に入りこんでいることが確認されたとき。

2 避難誘導は、特に危険が予想される範囲については消防が担当し、その他については警察官等が担当する。

(電路の遮断)

第12条 指揮者は、電路の遮断を必要とする場合、電気事業現場責任者に対し、警戒区域の範囲を説明し、停電範囲を協議の上、電路遮断を指示する。ただし、病院又はコンピュータ、エレベーター等の特殊機器を使用している建物が含まれているときは、協議段階で検討し、広報等により周知徹底を図り停電による重大な支障を及ぼさないよう配慮する。

(ガスの遮断)

第13条 指揮者は、爆発等のガス災害防止のため緊急にガスの遮断を必要と認める場合は、ガス事業現場責任者と協議の上、ガス停止弁の閉塞を指示する。

(漏洩ガスの拡散)

第14条 指揮者は、漏洩ガスの拡散及び排除については、次の各号により措置するものとする。

(1) 下水溝、堀坑等地下施設物にガスが充満している場合は、マンホールの覆板等を可能な範囲で取り除き拡散を図る。

(2) プロパンガスボンベからガスが噴出している場合は、当該ボンベに注水すると逆にガスの噴出量を増加させることになるので注意する。また、転倒しているボンベからは液状で噴出するため可能な範囲で風上側から接近してバルブを閉塞する。閉塞が不可能な場合は、プロパンガス協会所有のキャップを使用し噴出が停止した後に転倒を直す。

(3) プロパンガスボンベからの漏洩ガスは、風の影響を受けて流動拡散するほか、低所に滞留しやすく、特に噴出点付近からマンホール、側溝等を伝わり流動するおそれがある。このため積極的にガス流動方向の風横側から高圧噴霧注水(開度60度、ノズル圧力6キロ以上)を行い、ガスを拡散させて排除する。

(4) 地下施設に流入したガスは、風向と関係なく遠方に流れ予想しない場所で2次、3次の火災が発生するおそれがあり、また、建物内等密閉された場所に流入した場合は、小火源で爆発するので人工風等でガスを拡散させ排除する。

(5) 隊員の服装は、防火衣、防火帽(フードを下げる。)及び皮手袋を着用する。ただし、ガスが滞留する地域に進入する場合は、努めて空気呼吸器及び耐熱服を着用する。

(噴出ガスに着火炎上している場合)

第15条 指揮者は、噴出ガスに着火炎上している場合は、次の各号により措置するものとする。

(1) 都市ガスに着火炎上している場合は、不用意に消火すると生ガスの噴出により2次災害発生の危険があるので、近隣建物等の延焼阻止を主眼とし炎上ガスについては、緊急遮断による自然鎮火を待つ戦法をとる。

(2) 中圧管等で噴出圧力が高いときは、メッシュの小さい金網、ムシロ等を覆い、その上から噴霧注水を行って火柱を低く抑え、延焼防止等の消火活動を容易にする。

(3) 単独のプロパンガスボンベからの噴出ガスが炎上している場合は、噴出炎の反対側から接近しバルブを閉塞する。

(4) ボンベ集積所で炎上している場合は、誘爆のおそれがあるので有効遮へい物等をたて、放水銃又は筒先を器物に固定する等により遠距離から大量の冷却注水を行い誘爆を防止する。

(事故原因の調査)

第16条 ガス漏洩事故の原因調査に関して消防側が必要と認める事項については、ガス事業者に対して資料の提出又は事故調査内容等の報告を求めるものとする。

(復旧)

第17条 指揮者は、危険排除が完了したときは、電路又はガスの遮断箇所の復旧をそれぞれの現場責任者に対し指示するものとする。

(火災警戒区域の解除)

第18条 指揮者は、火災警戒区域の必要がなくなったと認めたときは、速やかに解除し、消防隊を引き揚げさせるものとする。

(教養訓練)

第19条 所属長は、ガス洩れ事故に関する知識及び消防活動の技術を習得させるため、随時、教養及び訓練を次の各号により実施し、隊員の安全管理に努めるものとする。

(1) ガス洩れ事故に対する警防活動要領について

(2) ガスの性質及びガス洩れ事故の特性について

(3) 管轄区域内のガス導管敷設状況について

(4) ガスの遮断装置、自家発電設備等の設置状況について

(5) ガス遮断バルブの操作要領及び電路の遮断操作要領について

(6) ガス洩れ事故を想定し、関係機関を含めた総合消防活動訓練

(7) 資機材の取扱訓練

(必要資機材の整備)

第20条 所属長は、おおむね次の資機材を現場で安全かつ有効に活用できるよう整備しておくものとする。

(1) 可燃性ガス検知器及び可燃性ガス測定器

(2) 酸素有毒ガス測定器

(3) 耐熱服

(4) エアーソー

(5) 防爆型懐中電灯

(6) 空気呼吸器

(7) その他必要な災害対策用資機材

1 この基準は、昭和57年4月1日から施行する。

2 関係機関については、あらかじめ協議をして決定し、通信を簡単にできるよう、機関名、電話番号、担当部課名等を一覧表としておくものとする。

別表(第11条関係)

要避難範囲の最低基準

ガス漏洩建物の構造

ガス漏洩建物全体

指示の内容

優先順位

木造建物(防火造を含む。)

周囲の建物

半径30m以内の木造建物及び直接見通しのある開口部を有する耐火建物(又は住戸)

安全な場所への退避

最優先

周囲の屋外

半径50m以内で直接見通しのある場所

周囲の建物

半径30mを超え50m以内で直接見通しのある開口部を有する建物

出入口、扉、窓際からの退避


耐火建物

ガス漏洩建物

1 ガス漏洩建物が小規模の場合は、当該建物全体

2 ガス漏洩建物が大規模で重層の場合は、ガス漏洩部屋(又は住戸)及び隣接部屋(又は住戸)並びに当該部屋の直上部屋(又は住戸)(以下「ガス漏洩建築物等」という。)

安全な場所への退避

最優先

周囲の建物

1 半径50m以内の木造建物で漏洩建物等の開口部に直接面しているもの

2 半径50m以内の耐火建物(又は住戸)で漏洩建物等の開口部が直接見通しのある開口部を有するもの

周囲の屋外

半径100m以内で漏洩建物等の開口部が直接見通しのある開口部を有するもの

周囲の建物

半径100mを超え150m以内の建物(又は住戸)で漏洩建物等の開口部が直接見通しのある開口部を有するもの

出入口、扉、窓際からの退避


上越地域消防事務組合ガス漏洩事故に対する消防活動基準

昭和57年4月1日 本部訓令第2号

(昭和57年4月1日施行)