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【特集】スプレー缶、破裂温度と威力の実証。
『広島県内でトラック大破』
令和2年8月19日、広島県内において、車内で冷却スプレー使用後、喫煙しようとライターを使用したところ、その火がガス成分に引火してトラックが大破する事故が発生しました。LPガスは缶の中で凝縮されることで液状を保っており、常温、常圧下に放たれると、即時にガス化する可燃性物質です。
『スプレー缶は絶えずガスの圧力で張り詰めています』
冷却スプレー、制汗スプレー、ヘアスプレー、カセットボンベ……。LPガス含有スプレー缶には、『温度が40℃以上になる所に置かないこと』と記載されています。温めるほどガスは膨張し、スプレー缶の内圧が高まるからです。そして、ある時、破裂するのです。
『スプレー缶は何℃で破裂するのか』
ネットでよく見られる実験動画は、スプレー缶を「直火であぶる」や「ファンヒーターの前に置く」など、「破裂する危険性」にフォーカスするものばかりですが、上越地域消防局は、スプレー缶を直に加熱するのではなく、専用ヒーターボックスを作成し、「空間の温度」を間接的に熱することで、実際に事故が発生する状況に、より近いシチュエーションで実験を行っています。
『爆音、炎上、そして……』
実験には、購入から数年経過した制汗スプレーを使用しています。専用ボックス内にこのスプレー缶を吊り下げ、空間温度を40℃から徐々に温めていきます。なお、ボックスの右側から差してある棒状のものは、高精度温度計の検知部です。
時間をかけ、ゆっくりと温度を上げていくと、60℃程度で、缶が横揺れを始めました。底の部分がふっくらと膨らみ、内容物の膨張が目で見てわかります。そして、73℃に差し掛かろうとした時でした。
けたたましい爆音が鳴り響くと同時に、専用ボックスの蓋と前板が吹き飛びました。その直後、火炎が大きな玉になって直上に噴出したのです。
『まるで弾丸のように』
スプレー缶を見ると、口金の部分が飛び、中身はすべて消えていました。また、爆風で吹き飛んだ専用ボックスの蓋を見ると、実験前にはなかった3cm大の穴があいています。
専用ボックスの蓋には、分厚い防炎シートを用いています。スプレー缶の口金はこれを貫き、なんとコンクリート製の天井にえぐれたような痕跡を残しました。このことから、スプレー缶の破裂は、火炎による危険に加え、物理的に人を傷つけることも証明されたと言えます。
『適正管理を心がけて』
今回の実験で、古くなったスプレー缶は72.9℃で破裂しました。これが、さらに傷ついていたり、腐食していたり、へこんでいたりすれば、内圧の分散に不均衡が生じ、さらに低い温度で破裂する危険性が考えられます。そして、以上を踏まえ、最後に、炎天下に放置した車内で計測した温度をご覧ください。
スプレー缶はデリケートに扱うとともに、決して40℃以上になるところには置かないようにすることを、強くお願いします。
お問合せは……
本掲載内容、実験動画提供等に係るお問い合わせは、☎025-545-0230 上越地域消防局予防課まで